本テーマは、コンピュータ仲介型コミュニケーション(Computer Mediated Communication, CMC)の一分野でもある。コミュニケーション支援や人工パートナーの新しい機能を提案し、ITの応用分野の発掘に貢献することをめざすものである。将来、ロボットやユビキタス情報環境は個人の行動を記録・認識しておいて、将来の行動予測をして必要な補助をするようになるだろう。これらのシステムが人間と共生できるための要因を抽出することは、重要な研究課題である。また、情報通信技術の発達によりコミュニケーション機会がますます増大しており、限られた人間の能力と時間のなかで効率的なコミュニケーションを支援することは今後重要となってくる。客観的な事実を伝えるだけでなく、主観を伝えあうコミュニケーションによって大量の情報の中から重要な情報へのアクセスを容易にする方法を考える。
1. ぬいぐるみ型ロボットの基本設計と試作
本研究では、各種センサー(カメラ、マイク、接触、曲げ、加速度、コンパス、GPS、RFID、温度、電圧など)を装備したぬいぐるみ型ロボットを試作する。RFIDおよびGPSはこれまでの研究で考慮しなかった新しいデバイスである。これらは、自分の位置や環境との相互作用の手がかりを与える。 本体とCPU等を格納する部分との振り分け、ぬいぐるみ形状の大きさ、外見、キャラクターなどを検討する。
2. 分節化アルゴリズムの検討
センサー出力のパワーなど比較的単純な特徴のセンサー間相関により分節化の手がかりを得る。HMM、ベイズネットなどの状態遷移を表現できるパターン認識モデルの適用を検討する。
3. 初期データの収集と分析
試作機設計のために、各種情報システムと相互作用するときの初期データの収集を行うとともに、データマイニング等の手法を用いて分析する。
4. 情報提供基盤の構築
ぬいぐるみ型ロボットがユーザと相互作用する際に、ユーザに関する背景知識を収集して付加的状況の理解を助けるための基盤を構築する。
1.対面コミュニケーションモダリティの拡充
対面コミュニケーションにおいて、ぬいぐるみ操作による音楽演出が可能なメ ディアを試作し、ぬいぐるみ操作モダリティと音楽モダリティの付与がコミュニケー ションにおける発話様態に影響を及ぼすことを実験的に確認した。
・米澤朋子, ブライアン-クラークソン, 間瀬健二: 文脈 適応型音楽生成を伴うぬいぐるみインタラクション, 情報処理学会論文誌, vol.43, no. 8, pp.2810-2820, 2002年8月
2.遠隔コミュニケーションにおけるアウェアネス効果
2体の、音楽演出が可能なぬいぐるみを接続し、相互の操作状況に応じた遠隔音楽 演出が可能なシステムを試作した。これによりコミュニケーションアウェアネ スの達成と親密なコミュニケーションメディアを提案した。
・Kazuyuki Saito, Tomoko Yonezawa and Kenji Mase: Awareness Communications by Entertaining Toy Doll Agents, International Workshop on Entertainment Computing (IWEC2002), pp. 326-333, Chiba, Japan, May 2002.
3.パートナーの視点による行動記録
センサーを搭載したウエアラブルシステムやぬいぐるみを使って、ユーザが持 ち運ぶにつれて起こす多種多様な行動をパートナーの視点で記録することがで きるしくみを提案した。
・Brian Clarkson and Kenji Mase and Alex Pentland: The Familiar: a living diary and companion, Proc. CHI2001 extended abstracts, pp.271-272, Seattle, April, 2001.
・間瀬健二、角康之:"インテリジェント・インタフェース", ヒューマン インタフェース学会誌, vol. 5, no. 2, pp.25-28, May, 2003.
・http://www.darpa.mil/ipto/research/llog/index.html
2. Microsoft Research(MSR)のGordon BellはMyLifeBitsというプロジェクト で自分の体験を全てディジタル化することを自ら実施している。Bellは自分が 書いた著書や電子メール・メモを記録するだけでなく、見たり読んだりした書 物や音楽や映画をすべてディジタルフォームで記録することを実践している。 現在アノテーションは人間が行っている。環境側が行動記録をしてい く仕組みととらえると、本テーマでは一緒に行動するパートナーを構築するこ とを狙っている。
・http://research.microsoft.com/research/barc/MediaPresence/MyLifeBits.aspx
3. ウェアラブルコンピュータ(WC)の研究が各所で盛んである。MITメディア研 究所では個人の体験記録を1人称のシステムで行う研究を行っている。また東 京大学では心拍などの生理データを採取し体験のアノテーションをしている。 はこだて未来大では記憶想起支援を目指している。これらは1人称のシステム を構築している。
4.一方、センサーを張り巡ら した部屋や空間でユーザの行動を観測する研究は、CMU、京大、筑波大、ソフ トピアなど多くの機関で行われている。
本提案はその中間に位置づけられる人 工パートナーの研究と見ることができる。類似の分野としてはヒューマノイド ロボットによるコミュニケーションの研究が和歌山大、ATRなどで行われて いる。本研究は受動的なロボットであるぬいぐるみ型がもたらす優位性に着目 する。そのような研究は、研究代表者が関与する以外はまだない。ぬいぐるみ ロボットそのものについては、マイクロソフト、MITなどでの研究例があるが、 体験記録には及んでいない。
last update June 25, 2003.